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サスピション
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ストーリー紹介
- 人間の抱く「不安」や「疑念」をテーマに描いた、シリアスな短編集です。一話づつ違った主人公と舞台が設定されています。
(第1話 ハエたたき)
この物語に登場する「シェフ2号」は、「ダリとの再会」の「ダリ」と同じく、四角いボディに無骨なマニュピュレータを2本くっつけたごくシンプルなスタイルのロボットです。
しかし、『サスピション』の第一話として描かれたこの作品「ハエたたき」では、「ダリ」のような献身的で忠実な愛すべきロボットとして描かれることはなく、ひたすら冷徹な任務実行マシンとしての側面が強調されています。
主人公「おれ」はあるロボット製造会社の女性社主の夫。設計士が本業の彼は、妻が自分ではなく専務を社長に推挙したことから、妻に疑惑と不満を持ち始めます。妻さえ死ねば会社の株をすべて自分のものにでき、会社の経営を一手に握れる、と考えた主人公は、自らの設計した調理ロボット「シェフ2号」に、誤作動を装って妻を殺させようとするのです。
20世紀流の犯罪小説ならば、凶器は灰皿や火かき棒、とでもなるところを、ロボットに殴り殺させて完全犯罪をたくらむというあたり、SFの名手である手塚治虫らしい設定です。殺人の片棒を担がされる「シェフ2号」は、忠実ゆえに哀れで、機械らしい冷徹さがとても不気味です。新しくて便利な機械がどんどん発明される現在、なにもかもを機械任せにすることに日頃私たちが感じている、漠然とした不安を実にリアルに表現しています。
ただ、機械を使った冷徹な犯行であるからこそ、ほんの些細な誤差も許されません。さて、「シェフ2号」は果たして、本当に妻を殴り殺してしまうのでしょうか。意外なラストは機械の愚直なまでの正確さを皮肉った、実にぞっとする鮮やかなものですので、どうか最後までじっくり、サスペンスを味わいながらお読みください。
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